事例紹介 ~魅力ある職場づくり~ CaseReport5
順天堂東京江東高齢者医療センターでは、まず職場の雰囲気や実際に働く具体的なイメージを知ってもらうことが、採用増加につながるのではないかと考えました。
そのため、入職前に同センターを1日かけてじっくり体験できるよう、参加者の希望を優先したインターンシップを実施。 受け入れ体制も工夫し、柔軟に対応しています。
この取り組みについて看護部総務課課長のカーン洋子さんにお話を伺いました。
△カーン洋子さん
当医療センターは、一般急性期病院に3つの認知症病棟がある日本でも珍しいユニークな病院です。ただし「高齢者医療」という名称やあまり知られていないことも影響してか、新規採用者の獲得に難航していました。
多くの病院でも実施していると思いますが、当医療センターでも2007年から学生や既卒者に向けてインターンシップを始めました。できるだけ多くの人が参加できるように、日程は「土日以外はいつでもどうぞ!」と希望に合わせて調整しています。
さらに、参加者一人に一人のスタッフが対応するマンツーマン形式で行います。対応するスタッフは、参加者が親近感をもちやすく、自分の働く姿をイメージしやすくなるよう、なるべく年齢の近い人を選ぶように配慮をしています。
インターンシップの内容は、午前と午後に各病棟で、それぞれ一人のスタッフについてシャドウイングを行います。場合によっては、学生であればケアの際に身体を支えたり、既卒者であれば簡単な処置をスタッフと一緒に行うこともあります。
また、スタッフに実際の看護の内容や気になることなどを、気軽に質問できるようなトークタイムもつくります。 基本的には1日コースですが、半日だけの参加を希望する方にも、応じるようにしています。
インターンシップをフレキシブルにした結果、年々、参加者も増えてきており、2023年度は53名の参加がありました。内訳は新卒者50名、既卒者3名です。
参加者のアンケートでは、「看護師がどのように働いているかがイメージできた」、「連携が良い職場の雰囲気がわかった」、「1年目看護師から話が聞けて不安が解消された」、「自分の未来を具体的にイメージできた」などの意見をいただいています。
また、認知症病棟の体験では、「認知症の患者さんへの声かけや対応している現場を実際に見ることができてよかった」、一般病棟では「業務内容を効率よく実施しながら、患者さんの目線に立って優しく対応している姿が印象的だった」といった感想も寄せられています。
職場の雰囲気を実際に体験して感じ取ってもらうことで、私たちが意図した“百聞は一見に如かず”を体現できていると思っています。
インターンシップは副次的な効果として、受け入れた部署やスタッフに良い影響があります。
例えば、普段当たり前のように行っているケアについて参加者から「感動しました」など良いフィードバックをもらうことで、新たな気づきややりがいにつながっているようです。
また、参加者に説明しながら看護を実践することは、個々のケアを振り返る良い機会となります。
現在インターンシップの告知は、当センターのホームページやパンフレット、学校訪問、合同就職説明会などで行っていますが、もっと多くの人に知ってもらうために、今後はSNSなども活用していきたいと考えています。
△マンツーマン形式でのインターンシップ
西岡明日香さん
私はBコースのインターンシップに参加しました。外科病棟の体験では1年目の方のシャドウイングをしましたが、1年目なのに生き生きと働いていて、私もこんな風にここで働きたい、これが自分の希望する働き方だと気づきました。
また、学生の時の病院実習では、受け持ちの患者さんのケアをどうするか、どのように看ていくのかを考えることに必死で、なかなか職場の雰囲気までを観察する余裕はありませんでした。
インターンシップは実習とは違いシャドウイングなので、職場全体や看護師の業務を少し客観的に見ることができました。当センターに入職を決めた理由としては、インターンシップの時に肌で感じた「職場の雰囲気が良かった」ことがとても大きかったです。
実際に働いてからも、その点のギャップはないので、やはり入職前にインターンシップで体験することは大切だと思います。