事例紹介 ~魅力ある職場づくり~ CaseReport4
東京都立墨東病院では、看護部が主体となり人材のさまざまな定着対策を行っています。
例えば新人看護職員に同院の良さを知ってもらう施策や、働きやすい職場にするためのアイデアを出し合うユニークで斬新なプロジェクトの展開です。
この取り組みについて、看護部統括看護師長の三石佐織さんと士反めぐみさんにお話を伺いました。
△三石佐織さん(左)士反めぐみさん(右)
当院には、スタッフにやりがいを感じてもらい定着に繋げることを目的とした「患者・職員ワクワクプロジェクトチーム」があります。このチームは看護部が主体となり、さまざまなプロジェクトを展開しています。
その1つが5年ほど前から始めた「墨東愛の樹」です。それは壁一面くらいの紙に描かれた大きな樹に、看護職員のほかメディカルスタッフの顔写真を花びらにみたてて貼り、樹に花がいっぱい咲いているように仕上げています。働いている人の顔がわかり、コミュニケーションにつながると思っています。
△墨東愛の樹
看護部のみの「希望の樹」もあります。これを作った背景には、入職直後のゴールデンウイークを境に、数人が立て続けに辞めてしまったことがあります。
「希望の樹」は新人看護職員の写真が花びらで、葉っぱの裏側には先輩たちの失敗談が書いてあるというものです。
新人たちが悩んだり落ち込んだりした時に葉っぱをめくることで、先輩たちがその失敗をどう乗り越えてきたかを知り、勇気づけられるように作りました。
また、新人研修を1週間集中的に行う座学や技術習得の内容から、臨床現場を先輩や実地指導者について回るシャドウイング研修に変えました。
それにより先輩の看護を見ることで業務の流れがわかり、患者さんとコミュケーションも取れるので、新人にはとても好評でした。こうした取り組みにより新人の離職率は一昨年の4.1%から昨年は1.1%に低下しました。
その他、「働きやすい病院にするために、私たちができること」をテーマに、他職種各部署が参加する討論会「B(BOKUTOH)サミット」を開催しました。
お面などで仮装しニックネームで呼び合うなど個人を特定できないように配慮し、思ったことを自由に発言できるようにしました。その中で提案されたリフレッシュ休暇の導入は、実際に今年度の休暇取得への取り組みにつながりました。
看護部としては心理的安全性やワークエンゲージメントを高めるための取り組みも行っています。
今年は「ウェルビーイング」をテーマにしており、その日の目標を例えば「感謝の気持ちを言葉にする」や「一日笑顔でいる」などを朝礼で掲げ、終礼で各自に振り返ってもらいます。
各自がそれぞれ思いを言葉にすることで、努力の過程が周りにも見えスタッフ間の距離感も近づき、風通しのよい職場づくりにつながっていると思います。
△B-SUMMIT開催案内
これまで行ってきた看護部の「働きやすい職場にするためのワクワク・プロジェクト」は、病院全体に広がっていきました。
例えば地域のコーヒー店に院内にコーヒースタンドを出してもらい、スタッフにブレイクタイムをとってもらったことや、職員食堂が工事中の時はフードトラックに来てもらったこともあります。そして現在、月1回の「キッチンカーがやってくる!!」の定例イベントに発展しました。
現在、病院主体の多職種プロジェクトもいくつか動いています。例えば業務改善のプロジェクトでは、他職種との情報共有をDX化して業務の効率化を図る取り組みをしています。
これらのプロジェクトに参画することで業種の垣根を越えた横のつながりができ、コミュニケーションが活発になるなど効果を発揮しています。
これからも看護部が主体となって、働きやすい職場につながっていくような現場の声やアイデアを拾い上げ、院内にも広げていきたいと考えています。
士反めぐみさん
キャリアパス研修を2年前から立ち上げました。部署異動となると、なかなか元の部署には戻りにくいので、研修と称して半年から1年ほど他部署を経験するという制度です。
例えばNICUから小児科に研修に出るなどです。自分に合わないからと当院を辞めてしまう前に、他部署を経験することで見えてくるものもあると思いますし、キャリア形成も図れるのではないかと思います。
三石佐織さん
働きやすい職場にしていくためには、指示するのではなく依頼するという気持ちを意識するなど、一緒に働く人へのリスペクトが大切だと思います。
みんなが辞めないで、この先ずっと一緒に働いていくためには、どのようなことが必要なのか。
これからも現場の声を拾い上げ、みんながワクワクするようなプロジェクトを考え企画し、実践していきたいと思っています。